Large thumb shutterstock 212320537

こちとらとは方言なの?意味や由来や使い方と関西での類語は?

更新:2019.06.21

「こちとら」という言葉、時代劇で聞いたことはあるけどどんな意味なの?と思う人がいるでしょう。とても響きがおもしろいです。方言なのか、標準語なのか。その由来は?使い方にはどんなものがあるのか、例文を含めて紹介します。関西や他の地方でも似た言葉があるのでしょうか。

※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。



こちとらとは?意味や類語や対義語は?

こちとらの意味

こちとらは自分を表す言葉なので意味は「わたし・我々・こちら側」という意味です。漢字では「此方人等」と書きます。代名詞「こちと」に「ら」がついたもので、一人のときでも複数でも使います。使われていたのは江戸時代で庶民、主に男性が使っていました。使い方は喧嘩を売る時や自分をぞんざいに言う時です。

「こちとら江戸っ子でぃ。」の例文のように、江戸(東京下町)の町人が使ってきました。とても威勢の良い感じで、ちょっと早口でキツイ言い方をするとぴったりです。基本的には相手がいて、その相手の立場と比べてこちらは~という意味があります。身分制度があった時代なので、相手と自分との違いが明確だったのでしょう。

日本語では一人称の単語がたくさんあります。それらを自然とうまく使い分けているのは日本人です。「わたし」はきちんとした場で通用しますが、「僕・俺」ではくだけすぎています。「こちとら」も同じように使う場面やその時の感情が重要で、他の類語とは違う意味合いがこもっている言葉です。

こちとらの類語はたくさんある

こちとらの類語として江戸時代の庶民が使っていた他の言葉には、「おいら・おれっち・あたし・あっし・わきち」などがあります。商人は「てまえ」なども使っていました。この中でも「あたし」は女性ではなくて若旦那が使う言葉でした。おっとりした若旦那とせっかちな江戸っ子では一人称も違っていました。

江戸時代は身分制度があった時代で、身分によって使う言葉が異なります。庶民は庶民の言葉、武士であれば、「拙者・それがし・みども」などの類語を使います。現代語でのこちとらの類語は「こちらは・当方では」や「わたし・我・僕・自分・おれ」などの一人称の言葉です。たくさんある類語ですが細かい意味合いが違います。

こちとらの対義語はそちとら

こちとらの対義語を調べてみると「そちとら」という言葉が出てきました。漢字で書くと「其方人等」です。二人称で単数複数ともに使います。例文は「そちとら、えらそうなこと言ってんじゃねえよ。」のようになります。現代風に言うと「おまえら・てめえら」に近い口の悪い言い方です。今すぐにでも喧嘩が始まりそうです。

こちとらが自分のことやこちらがわを表すので、広い意味での対義語は相手のことを指す言葉と言えます。「あちら・あっち・あなた・お前・先方・相手方・向こう側・反対側・彼方」などです。最近は「相手サイド」という言い方もあります。「敵・仇」のような気持ちが入った言葉も対義語と言えるでしょう。


こちとらの使われることの多い地域は?他の地域の言い方は?

こちとらとは江戸っ子の言葉

こちとらは江戸の町民たちが使っていた言葉です。江戸時代末期から明治になると身分を超えて、江戸市民に流行したようです。他の地域でも使っていたのか調べてみると、愛知県では使われている地域があることがわかりました。多くの地域ではは江戸の言葉ととらえていて、意味は知っていても使わなかったそうです。

当時の江戸は大変人口が多く、世界でも有数の大都市でした。士農工商の身分的には下とされた町人たちは力をつけてたくましく生き、武士をしのぐ力までも付けます。辛いことや悲しいことを笑い飛ばして生きる人々の間で愛されたのが江戸弁でしょう。気風が良くて新しい物が好き、喧嘩っ早い江戸っ子にぴったりな言葉です。

江戸時代の言葉はは現代とはずいぶん違うものが多くあります。キスのことを「口吸い」と言ったのですよ。外来語のない時代、どんな日本語があったのか、こちらの記事もご覧になってみてください。

江戸の言葉はリズムと響きがおもしろい

こちとらもリズムと音の響きがとてもおもしろいです。他にも同じようなおもしろい言葉がたくさんあります。江戸っ子と言えば頭に浮かぶせっかちで負けず嫌いで世話好きな性質が出ています。例えば「あたぼう」は「当たり前だ、べらぼうめ」を短くしたものです。言わなくてもいいひと言を相手に言わさない粋な言葉です。

全く意味のないおかしな言葉も多いです。「あんにゃもんにゃ」は相手を罵倒するときに言います。こう言われたら、怒っていてもクスッと笑ってしまいませんか?江戸っ子に限らずよく使う「御の字」も困った場面で助かった時の気持ちを表すのにぴったりです。たった三文字で上手く言い表しているのに感心します。

江戸の言葉は話す人たちの気質を表しています。昔の人が使って広まった言葉は場面や感情を的確に言い表したものだったり、リズムや響きが独特で強く印象に残ったりするものですね。だからこそ、今も受け継がれて残っているのでしょう。「こちとら」もそういう独特の言葉として多くの人が使い方を知ってほしいと思います。

関西での言い方は


関西では同じ意味の言葉は何でしょう。「わたし」の他には「こっち」という言い方をします。「そっちは怒ってるかもしれないけど、こっちだって大変やった。」のように使います。不満な口調です。でも乱暴な言い回しだけでもなく普通にも使える言葉です。女性の場合は「うち」とも言います。複数なら「うちら」となります。

だから「自分の家」は「うちのうち」」となるわけです。逆に相手のことを「自分」と言う使い方があります。これには関東の人は戸惑われることが多いですね。「じぶんのうち」が実は相手の家のことですから、変な話です。地域によって違う方言はおもしろいものです。関西ではこちとらにぴったり合う言葉はないようです。

関西以外の地域の方言

こちとらにあたる方言を地域で調べてみると、東北では「おら・おらぁ」は広く使われています。石川県では「おらっちゃ」飛騨地方では「おり」静岡では「うら」とも言います。熊本県では「おどん」、鹿児島県では「おいどん」沖縄では「うん」と自分のことを言うそうです。

「わし」や「わて・わたい」はいろいろな地域で聞かれますが、ほぼ年配の人が使う言葉です。若い人たちはその地域の方言よりも「わたし・あたし」が多いようです。テレビなどで標準語が浸透している結果でしょうか。そう思うと「こちとら」という言葉を使っている人が若い人にもいるのはやはり魅力があるからですね。

方言にはその地方の特色があって、ほっこりと可愛らしい言葉があります。「好き」と告白する言葉も方言を見てみるとさまざまでおもしろいです。こちらの記事に詳しく書かれていますので、かわいい「好き」を研究してみてくださいね。

こちとらの由来や語源とは?

こちとらの由来は平安時代

由来についてはこちとらの語源を見ていくと、平安時代になります。貴族の女性たちが使った「こなた」という言葉です。漢字で書くと「此方」で、一人称の私という意味ではなく「こちら」という意味で使っていました。平安時代の貴族の女性は人と直接顔を合わせることは少ないです。何かを隔てての会話や人づてに話をします。


相手側に対してのこちら側という意味で使われた「こなた」がいつしか「こちとら」になったのです。でも平安時代ではとても丁寧な使い方なのに、江戸時代では調子が乱暴な感じに変わってしまいました。その経緯についてははっきりとわかっていません。浄瑠璃や落語などで使われ始めたということぐらいしか伝わっていません。

こちとらが町民に広まる

こちとらは「こちと」という代名詞に「ら」が付いたものです。こちとは自分を示す言葉で、江戸時代には自分のことを指す言葉がたくさんありました。その中で、相手に喧嘩を吹っ掛けるようなときやぞんざいな口調で話すときには「こちとら」を使うようになりました。勢いがついて町民の男性たちに流行したと考えられます。

江戸弁として世に広まったこちとらは、カテゴリーとして俗語に入ります。現代でも10代の若者にしかわからないような流行語があります。それと同じで改まった場所では使わないけれど、日常的に使われるようになっていきました。きっと、威勢良く使うとかっこよくて真似したのでしょう。

こちとらは江戸つまり東京で使われるから標準語なのかと思う人もいますが、標準語ではありません。標準語はアナウンサーがニュース番組などで使う言葉で明治時代に政府が作り上げたものです。江戸弁は下町の人が普段の会話で使うものです。方言についてはその分類は難しいのですが、こちとらは方言とは捉えられていません。

こちとらの例文や使い方とは?

こちとらの使い方は不利な状況の時

こちとらは相手がいる状況で使う言葉です。しかも自分が不利な状況の時に使われるのです。つまりこちらの状況は○○なので、少しは考えてもらいたいというような内容を乱暴な言い方で言うのがこちとらです。投げやりな感じで捨て台詞として言う場合が多いです。「こちとら一文無しよ。」の例文がわかりやすいでしょう。

でも、一方で江戸っ子の気質からしてもしょぼんとしているわけではありません。見栄を張って自分を大きく見せたい気持ちも含まれています。「こちとら」で始まる文は「~だけれども、おれを見くびるなよ。」「なめんなよ。」という意味が言葉の裏には隠されています。ここが「こちとら」のおもしろく深みのあるところです。

こちとらを使った例文その1・昔Ver.

こちとらは江戸時代に日常的に使われた言葉なので、まずその時代の例文を集めてみました。江戸時代の落語などにもでてきますが、明治の作家の文章でも使われています。昔の町民が話す言葉として雰囲気が味わいやすい言葉なのだと思います。自分(こちとら)と比べる相手がいること、その相手に対して自分は~という形です。

こちとらの例文・昔

  • てやんでぃ、べらぼうめ。こちとら江戸っ子でぃ。
  • 何言ってやんでぃ。こちとら勝負師だい。
  • こちとら虎ですよ。猫なんぞひとひねりだ。
  • こちとらも随分御厄介になった方だ。
  • こちとら、とおの昔にお見通しでぃ。
  • こちとらはどうで着た限(きり)雀ときているから

こちとらを使った例文その2・現代Ver.

こちとらは現代でも下町育ちの年配の男性はよく使う言葉です。相手に喧嘩を売るとき、怒りを表すときにこの一言でニュアンスが伝わるのは気が利いていますね。また自虐ネタとして使ったり、相手を励ます言葉としての使い方もあります。昔は男性だけが使うイメージですが、使い方によっては女性も嫌味がなくいいと思います。

こちとらの例文

  • こちとら忙しいのに、ゆっくりお茶飲んでるんじゃねぇよ。
  • こちとらもう10年もこの仕事やってるんだ!
  • お前はいつも気前がいいな。こちとらはいつも金欠さ。
  • こちとら体育会系や。体力勝負は任せろ!
  • こちとら主婦歴10年よ!そんなの朝飯前よ。

ツイッターなどでもこちとらをうまく使って相手に気持ちを伝える人がいます。意味を理解して、相手の立場を分かった上で使うと、乱暴な感じだけではなくて相手への思いやりが伝わる文や自分に気合を入れる文にもなりますね。例文を参考にして、こちとらを使った威勢の良い文を発信してみましょう。

こちとらを使った例文その3・英語Ver.

こちとらを英語で表すと「I/we/this side」などの言葉になります。例えば「こちとら徹夜で仕事よ」という文は「We all worked all night.」となります。英語にすると、日本語のこちとらのニュアンスが消えてさらっとした文になりますね。一つの単語の持つ力に驚きます。

英語の場合は話すときの身振りや表情で、話し手の感情を表すのでしょう。日本語でももちろんそうですが、こちとらという言葉一つで話し手の感情が伝わるなんておもしろいし、とても気に入りました。英語の例文と比較してみてよくわかりました。

こちとらとは威勢の良いおもしろい言葉

江戸っ子に愛されてきたこちとらという言葉は、威勢がよくおもしろい響きです。関西にも他の地域にも全く同じ意味合いの類語はなく、江戸下町の地域で流行しました。意味を理解して、例文を自分で作ってみたりすると使い方もよくわかり、気持ちを相手にスムーズに伝えることができそうです。一度試してみてはいかがですか?

日本語は難しいとよく聞きます。確かに同じ発音でも意味が違ったり、敬語もさまざまで失敗することもありそうです。でもとてもかっこいい言い回しも多くあり、語彙が増えるとそれだけ教養ある人に見られます。こちらの記事も参考にしてください。

●商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。