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江戸時代の口吸いとは?現代のキスとの違い・平安時代から続く歴史も

更新:2021.06.03

みなさんは素敵なキスをされてますか?昔の日本ではキスのことを「口吸い(くちすい)」と呼んでいたそうです。文字通り口吸うこの行為を、平安時代や江戸時代の人々はどのような意味を込めて行っていたのでしょう。現代との違いを紐解きます。

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歴史はいつから始まったのか

「キス」の歴史は約四千年以前から

キスの始め

まず「キス」の歴史として確認されているのがエジプト考古学博物館に収蔵されているものに残っています。古代エジプト第十八王朝のアクエンアテン王が、娘に「キス」をしているように見える石像です。この石像は約四千年前のものであると推定されているので、キスという行為自体はそれよりも前から行われていたとなります。

「口吸い」の歴史は平安時代初期から

浴衣

日本での始まりは平安時代初期。日記文学である紀貴之の「土佐日記」の中で、「ただ押鮎の口をのみぞ吸ふ。この吸ふ人の口を押鮎もし思ふやあらむや(船上には新年を祝う食べ物も、愛しい人もいないので押し鮎を彼女に見立てて吸ってみた。鮎も口を吸っている相手のことを愛しいと思うのだろうか)」という記述があります。

平安時代末期に成立したとされる「今昔物語集」には「頭脳明晰な男が若く美しい女を愛してしまった。嫉妬に狂う本妻と別れ、その女を妻にしたけれどあっけなく亡くなった。悲しみに耐えれず葬らずに抱いて寝ていたが、数日後に女の口を吸ってみたらなんとも言えない匂いが出てきたので泣きながら葬った。」とあります。

また、古代では巫女が邪霊を払うために、相手に口を付けてその人間を癒していたという話もあります。諸説ありますが、もっとさかのぼれば室町時代から口吸い(くちすい)は行われていたという説もあります。800年余りの昔の人々の行為が、こうして現代に語り継がれていると思うと感慨深いものがありますね。


江戸時代の口吸い(くちすい)は好色の技のひとつ

江戸時代

その後江戸時代に入り、ついには好色の道を伝授する判本にも口吸い(くちすい)について事細かに記載されるようになりました。代表的な判本である「好色枕旅」には、口吸うときの作法や男女の語らいの作法、そして愛しい人を呼び出す方法まで書かれています。

また、江戸時代の春画には、男女の交わりと同じように口吸う場面も数多く描かれています。それらはどれも官能的で、性行為に深く密接したものばかりです。江戸時代の口吸いは前戯やコミュニケーションを取る目的として行われることもあまりなく、性行為の一つとして行われてきたようです。

また、吉原の遊女たちがお客を喜ばせる技として口吸うことは使われていたとのことです。吉原では二人で刺身を食べる様に似ていることから、口吸いのことを「おさしみ」と呼ばれていたそうです。しかしそれは客目線の時だけで、遊女たちの間では「手付」や「きまり」と称していました。あくまで仕事だったのですね。

「真田丸」での口吸う行為が話題に

テレビ

「口吸い(くちすい)」と聞いて思い出すのはこちらではないでしょうか。少し前に話題になった大河ドラマ「真田丸」での幸村ときりの口吸い。男女の関係にならないままつかず離れず、常に変わらず傍で幸村を支えてきた、きりのかけがえのなさに気付くこの場面に胸が締め付けられる思いをした方も多いでしょう。


いよいよ明日、家康に決戦を挑むというその夜。幸村に対し、「こうなったらおかみさまとご一緒しますよ、最後まで。源次郎様(幸村)がいない世にいてもつまらないから」と微笑むきりを幸村が抱き締めます。「遅い」と照れ隠しで話し続けようとするきりの口を自らの口で塞ぐ幸村との場面は今思い出しても胸がときめきます。

あの戦国武将も口吸いを

手紙

また、同時代の豊臣秀吉についてはこのような口吸いに関する資料も残っています。「戦国一の知恵者」とも呼ばれる秀吉ですが、幼い息子である第二子・拾(ひろい)に送った手紙に何度も口吸いがしたいと記述してあるのです。

「人が多くて、思いのままに口吸いができなかったのが残念で、忘れられないのです。北政所へも、言伝を確かに伝えました。すぐに行って、口を吸いましょう。(中略)あなたのことをなんでも見る鏡があって、見えていますよ。おかか(淀君)に口を吸われてはなりません。油断してはいけませんよ。」

秀吉はとても手紙が好きで、家族などに自室で書いた手紙には自由奔放な言い回しが数多く使われていました。子供に口吸うという愛情表現をしていたのは秀吉しか確認されておらず、その子煩悩ぶりには驚くものがあります。しかし、一説にはこの手紙は側室である淀君に対して「口吸いしたい」と書いたというのもあります。

江戸時代の口吸いと現代のキスとの違いは?

現代におけるキスの意味は愛情・友愛表現や挨拶


現代のキス

キスは、自らの唇を相手の唇や頬、手、おでこ、その他いろいろな場所に触れることを指します。愛情表現としてはもちろん、友愛表現としても使われています。海外と違ってまだ挨拶としてのキスは一般的に成立していませんが、恋人関係である二人が行う行為としてはとりたてて珍しくはありません。

映画やドラマのラブシーンはキスから始まるものが非常に多いですよね。誰かと交際することを想定した時も、体の関係よりまずはキスから、という考えの方も多いのではないでしょうか。こちらの記事にはキスや体の関係に至るまでのタイミングについて悩む女性へのアドバイスが書かれています。

また近年では、周囲の目を気にすることなく、気軽に街中や路上でキスをする若者も目立ってきました。こうした場面では前戯ではなく、愛しいという思いを行動で伝えるものです。こちらの記事にもあるように二人きりの密接した空間で行うのはもちろん、友愛を込めた軽いものまで、現代のキスにはとても幅広い意味があります。

江戸時代のキス(口吸い)の意味は強い性愛

リボン

口吸いとは文字通り「口を吸う」行為です。誰かの口を吸うということを考えればキスと同じと捉えてしまいそうですが、意味合いは違ってきます。口吸いには強い性愛の意味が込められています。口を吸う、舌の接触吸引という行為は現代の言葉に置き換えればディープ・キス。こう聞くとその意味が分かるのではないでしょうか。

江戸時代口吸いは性技そのもので、男女が交わっている最中に行っていたと言われています。作法として「吸口軒(ぎこうけん)」には「女の舌を出させて男の口の中に取り込んで、歯が当たらないよう唇で女の舌を抜いてしゃぶるようにしなさい」と何とも生々しい記述があります。しかし、それと同時に切ないものもありました。

菱川師宣の「恋のむつごと四十八手」に、人目を忍んで女に会いに来た男が、明け方になったのでしょうがなく立ち去ろうとしたところ、女が引き留めて名残惜しそうに口吸いする場面が描かれています。性技としての口吸いと、こうした愛情表現の口吸い。共通するのは二人きりの秘められた場面で行われていたということです。

江戸時代の口吸いから現代のキスへ

平安時代から江戸時代にかけて、様々な文献に残る口吸い(くちすい)にはある種の生々しさが濃く、現代のキスとは大きく意味が違うように思います。ですが、それらの性的なものも含め、「愛情表現のひとつである」ということは今も昔も大きく変わらないのではないでしょうか。

二人きりの秘められた平安・江戸時代の密接した口吸いから、公衆の面前で、時には友愛の意味で行われる現代のキス。時代は変わっても相手を思う気持ちをキスに込める、根本として「相手が愛しい」という気持ちをキスに込めることは、これから先も変わることなく続いていくのでしょう。

そしてこれから先の未来でも、そんな幸せな意味の込められたキスが行われていけばすてきですね。これからも愛しい人とすてきなキスを楽しまれてください。

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