Large thumb shutterstock 323107886

陶器・土鍋の使い始めにする目止めとは?やり方3つや失敗しない方法も

更新:2019.06.21

陶器や土鍋の使い始めに行う「目止め」という作業をご存知ですか?陶器や土鍋は使っていても、意外と知らない人も多い目止め。そんな目止めの効果と意味、片栗粉やお米などの身近な材料を使った簡単なやり方3つと、失敗しない方法やコツをご紹介します。正しく目止めを行って、陶器や土鍋を長く大切に使っていきましょう。

※商品PRを含む記事です。当メディアはAmazonアソシエイト、楽天アフィリエイトを始めとした各種アフィリエイトプログラムに参加しています。当サービスの記事で紹介している商品を購入すると、売上の一部が弊社に還元されます。



陶器・土鍋の使い始めに行う目止めとは?

陶器・土鍋のお手入れの基本の「目止め」

陶器や土鍋は「土物」とも呼ばれるように土からできているため、目には見えない小さな穴がたくさんあります。これを「目(め)」といいます。この「目」を塞がずにそのまま使うと、細かい目から水分などが入りこんで匂いが染みついて取れなくなったり、弱くなった部分から亀裂が入るなど、様々なトラブルのもとになります。

こういったトラブルを防いだり、汚れやシミを予防したり、製品の強度を増して長く使い続けるために、陶器や土鍋の使い始めにお米や片栗粉などを使って器の粗い「目」をふさぐ作業のことを「目止め」といいます。そんな目止めの基礎知識と実際のやり方や効果をここではご紹介していきます。

目止めの必要なキッチン用品①陶器

いろんな種類のある食器類のなかでも、目止めを必要とするのは陶器です。焼きものには「陶器」と「磁器」の2種類があり、磁器には目止めの必要がありません。陶器と磁器の違いを生活のなかで意識することはあまり無いかもしれませんが、それぞれ扱い方や特性が大きく異なるので、ここで整理しておきましょう。

陶器の材料は土質の粘土です。そのため粒子は粗く、焼成温度が低いため強度が弱いです。温かみのあるぽってりとした質感が特徴です。また磁器と比べると器の高台が茶色くざらざらしているので見分けることができます。粗い目に食材が入りこむことで変色やにおい移りが起こるため、使い初めに目止めをする必要があります。

一方磁器は、石を主成分とする磁土からつくられます。そのため粒子がとても細かく、高温で焼き上げるため耐久性に優れています。つるりとした滑らかな質感や、釉薬が均一にかけられているため色のムラや垂れが無いことが特徴です。水を通しにくく、匂いや色がつきにくいため、目止めをする必要はありません。

目止めの必要なキッチン用品②土鍋

もう一つの目止めの必要なキッチン用品は、土鍋です。土鍋も陶器と同じように素材が土のため、粒子が粗く無数の目があります。吸水性がとても高く、生き物のように水や空気を吸って呼吸するという点が、鉄やステンレス、ホーローといった扱いやすく丈夫な他の材質の鍋とは大きく違う、土鍋の特徴です。


定番の鍋ものやおでん、煮物、炊飯までその独特の風合いと高い蓄熱性で、寒い季節には手放せない土鍋ですが、使い始めに正しく目止めを行わないとヒビが入ってしまったり、底から水漏れしてしまう繊細な道具です。実際に土鍋を使っていて、そういった土鍋特有のトラブルを経験した方も多いのではないでしょうか。

一口に土鍋といっても様々な種類があり、主な種類として「伊賀焼」「蒙古焼」「セラミックス等その他」の3種類があります。最近はIH対応のものや炒め物等の油料理にも使えるものなど機能的な製品も多いです。なかには目止めを行う必要の無いものもあるので、それぞれの製品をしっかり確認してから目止めを行いましょう。

目止めをする意味は?

陶器・土鍋の使い始めに目止めをする意味①色移りや匂い移りを防ぐ

使い初めに目止めをする意味の一つ目は、陶器や土鍋に食品の色や匂いが移るのを防ぐことです。陶器や土鍋は目が粗いので、コーヒーや紅茶、油ものなど熱々の飲み物や料理をいきなり乾燥した陶器に注ぐと水分や油分が染み込んでしまいます。一度ついてしまったこうした汚れはあとから落ちにくく、こびりついてしまうのです。

使い始めに目止めを行うことで粗い目をふさぎ表面をコーティングすることができるので、水分や油分がしみ込むのを防ぎ、色移りや匂い移り、シミなどがつきにくくなります。また、生地に食べもののエキスが染み込むことでできるカビや匂いの発生も防ぐことができます。

陶器・土鍋の使い始めに目止めをする意味②ヒビや割れ、水漏れを防ぐ

土からつくられた陶器や土鍋には、たくさんの小さな穴があります。そのため、水分を通さないように厚く釉薬(ゆうやく)という灰などを水に溶いた薬品がかけられています。ところが、焼いたあと冷めていく過程での縮みの比率が土の部分と釉薬とで異なるため、表面に無数の小さなヒビが入ります。これを「貫入」といいます。

使い始めに目止めを行うことで、窯で焼いたときにできた貫入やヒビを片栗粉などのでんぷん質で埋めて、水漏れやヒビ割れを防ぐ意味があります。貫入は割れの原因になるヒビと違い、丁寧に育てていくと美しい風合いを醸しだします。ただ目止めを正しく行わないと、貫入から水分や油分が浸透しシミや匂いの元になります。

また土鍋の目止めには、目止めを行うことで熱にならし、よい貫入やヒビをたくさん入れるという意味もあります。土鍋に正しい方法で熱を加えると細かいヒビや貫入がたくさん入り、熱したときにそれらが熱エネルギーを分散させるので、いきなり大きなヒビが入るのを防いでくれます。


最初に目止めをしないとシミや匂いうつりの原因に!

陶器の中にも目止めが必要なものとそうでないものがあります。粗い土を使った陶器は目止めをせずに使うと水分や油分を吸い込むため、色の濃い料理の色が移ったり、油分が浸透してシミやカビ、匂いの原因となります。長い年月をかけてついたシミなどは器の貫禄になりますが、急激な変化や露骨な汚れは避けたいものです。

土鍋の場合は、基本的に目止めの必要な製品には必ず目止めを行ったほうが良いでしょう。目止めをせずに使い始めると、土鍋の土の匂いが溶け出して料理に移ってしまったり、逆に色や匂いの強い料理をつくるとその色や匂いが土鍋に染みついてしまい、ほかの用途に使えなくなってしまうことがあります。

また、土鍋の目止めを正しく行わないと細かいヒビや貫入から料理の水分が染み込みカビの原因となったり、水が染み込んだ状態のまま火にかけてしまうと大きなヒビが入ったり割れたりする可能性があり、とても危険です。土鍋は長く丈夫に使うために、使い始めはもちろん、日々のなかで定期的に目止めを行うことが大切です。

目止めのやり方3つ

陶器・土鍋の目止めのやり方①米を使う方法

1つ目は、お米を使った方法です。陶器の場合は大きな鍋に目止めしたい陶器を入れ、米のとぎ汁をかぶるくらい入れます。それを弱火で15~20分煮沸します。中で陶器が踊らないくらいの火加減にすることがポイントです。煮沸が終わったら鍋ごと自然に冷まし、ぬめりを洗い流してよく乾かしたら完成です。

陶器が入るほど大きな鍋が無い場合は、ボウルや洗い桶に陶器を並べ、そこに米のとぎ汁を煮立てたものを上からゆっくりとかける方法もあります。この方法の場合、米のとぎ汁を注ぐ前に陶器を少し温めておくことがポイントです。熱々のとぎ汁をいきなり冷たい陶器にかけると、割れることもあるので注意しましょう。

土鍋の場合はまず土鍋に8分目まで水を入れ、冷ご飯お茶碗一杯くらいを混ぜます。そのまま弱火にかけお粥を作ります。吹きこぼれないよう、ゆっくり加熱するのがポイントです。お粥が出来たら火を止め、自然に冷まします。鍋が完全に冷えたら中身を取り出し、よく水洗いしてからしっかりと水けを拭きとって乾かし完成です。

陶器・土鍋の目止めのやり方②片栗粉や小麦粉を使う方法


陶器の場合は、大きな鍋に目止めしたい陶器を入れ、そこにかぶるくらいの水と小麦粉か片栗粉を入れます。量はだいたい大さじ1~2杯程度ですが、水の分量によって米のとぎ汁くらいの濃度をイメージして入れます。それを鍋の中で溶かし、弱火で15~20分煮沸します。その後自然に冷まし、水洗いして乾かしたら完成です。

土鍋の場合も、米のとぎ汁を使った目止めのやり方と同様です。まず土鍋の8分目くらいの水を入れます。そこに小麦粉か片栗粉を入れ溶かします。粉の量は、水の量の5分の1くらいが目安です。それをそのまま弱火にかけ沸騰させます。1時間ほど経ったら火を止め、自然に冷まし、冷めたら水洗いしてよく乾かしたら完成です。

このように目止めはでんぷん質のものなら何でも代用できるので、米のとぎ汁の代わりに水にお米やご飯、米ぬかを直接入れて煮沸する方法もあります。片栗粉や小麦粉は熱を加えるとダマになりやすく、また片栗粉や小麦粉より米のでんぷんの粒子のほうが細かいため、冷ご飯を使うやり方が一番やりやすく初心者におすすめです。

陶器・土鍋の目止めのやり方③水かお湯につける方法

目止めのやり方の3つ目は、水かお湯につけるというシンプルな方法です。この方法は陶器の目止めに効果的です。新しい陶器を使い始めるときに、水に一晩つけておきます。たったこれだけで、生地の中まで水分が浸透し目止めができます。一晩水に浸けると全体的に色味が暗くなりますが、使っていくうちに馴染んできます。

最初にこの方法で目止めをしたら、あとは毎回器を使う度に、料理を盛る5~10分前に水かお湯に浸けましょう。熱い料理を盛り付けるときはお湯に、冷たい料理を盛り付けるときは水に陶器を浸けておきます。この作業を行うことで、器の生地を水分で飽和させて、食べものの水分や油分が入るのを防ぐことができます。

最近は陶器のシミを防止するために撥水性止水材などを施してある器も多く、そのような器を煮沸してしまうと熱膨張で水分が生地に入り込み、まだら模様ができてしまったり、返って器を悪くしてしまうこともあります。水やお湯に浸けておくというシンプルな方法は、手間はかかりますがどんな器にも優しい目止めの方法です。

目止めの失敗しないコツは?

失敗しない目止めの方法とコツ①でんぷんの溶液を作ってから火にかける

でんぷん質のもので目止めするときにありがちな失敗は、先に水だけに浸けてしまうケースです。目止めのときに最初にでんぷん質の入っていないただの水で陶器を煮沸したり土鍋を沸騰させてしまうと、後からでんぷん質を入れても、すでに目に水分が入っていてでんぷん質が入り込めず、目止めの効果がなくなってしまいます。

こういった失敗を防ぐためには、まず米のとぎ汁や片栗粉などを使ってでんぷん質を含んだ液を作り、その液に陶器を浸して煮沸したり、その液を土鍋に入れて沸騰させるなど、目が埋まっていない乾燥した状態の土ものの目やヒビに、でんぷん質が直接入り込めるように手順を工夫することが大切です。

失敗しない目止めの方法とコツ②急激な温度変化に気をつける

View this post on Instagram

鶏ときのこの炊き込みご飯🍄

A post shared by ami (@kuru617ami) on

陶器や土鍋などの土ものは、使い続けるなかでの熱くなったり冷たくなったりの繰り返しの中で、まるで呼吸をするように膨張と収縮を繰り返しています。そのため、急に熱したり冷やしたりすると、急激な温度変化に陶器や土鍋の呼吸が追い付かなくなり、ヒビが入ったり割れたりする原因になってしまいます。

そんなトラブルを防ぐため、目止めのときも急な温度変化を加えないようにすることが大切です。具体的には、煮沸したり火にかけるときにいきなり強火にかけるのではなく弱火でじっくり温めるようにしましょう。また、熱くなった陶器や土鍋は自然に冷めるのを待ち、絶対に急に冷やしたり水に浸けたりしないようにしましょう。

特に土鍋は直接火にかけて使うものなので温度変化には注意が必要です。火にかけるときは土鍋の底に水分が残っていないかを確認し、優しい弱火にかけてゆっくりと温めるようにしましょう。中に何も入っていない状態で空焚きするのもヒビや割れの原因となってとても危険なので、しないように注意しましょう。

正しく目止めを行って、お気に入りの陶器や土鍋を大切に使おう!

いかがでしたか?便利なグッズが溢れている今の時代、道具ひとつひとつを丁寧に手入れする、目止めのような作業には馴染みのない方も多くいらっしゃると思います。陶器や土鍋は、インスタントな使い捨ての道具とは異なり、長い時間をかけて使うほどに味わいが変化し、その過程を楽しむのがその道具の醍醐味でもあります。

ここでご紹介した目止めの方法を使って、陶器や土鍋を正しくお手入れし、長く美しく使っていきましょう。長い年月をかけて使い込んだ道具は風合いを増し、あなたにとって世界にひとつだけの愛着の湧く道具に育つことでしょう。

また、丁寧にお手入れをしながら育てていく道具は陶器や土鍋だけではありません。ほかの台所用品のお手入れ方法をまとめた記事があるので、以下にご紹介します。それぞれの道具に合ったお手入れ方法を学び、ひとつの道具を長く大切に使う生活を始めてみませんか。

●商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。