七夕に関する和歌10選|美しい有名な短歌/切ない恋の歌/星に因んだ短歌
更新:2021.04.19
七夕に関する和歌や有名で美しい短歌、切ない恋の歌、星に因んだ短歌、天の川の短歌をご存知ですか?和歌は、平安時代の万葉集や古今和歌集、新古今和歌集を指し、短歌は、明治時代以降の歌を言います。基本的には同じですが、時代で区分されています。今回は、現代語訳にした七夕に関する和歌や美しい短歌をご紹介します。
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七夕に関する美しい和歌10選
七夕に関する和歌①天の川相向き立ちて我が恋ひし君来ますなり紐解き設けな
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和歌と短歌は形式的には同じですが、つくられた時代で区分されています。今から1000年以上も前の平安時代の和歌と、日本の文化を代表する現代の短歌はどちらにも美しい歌があります。「五・七・五・七・七」から成る三十一音の歌体です。
七夕に関する美しい和歌1つ目は、奈良時代の歌人「山上憶良」の歌です。「天の川相(あひ)向き立ちて我(あ)が恋(こ)ひし君来ますなり紐解き設(も)けな」現代語訳は、「天の川を隔てて互いに向き合って立っている。私が恋しいと思うあなたがいらっしゃる。紐を解いてあの人を迎える準備をしましょう。」となります。
彦星を愛しく想う織姫星の気持ちが感じられる歌ですね。「紐を解いて」というのは、衣を脱いで寝るという意味です。美しい天の川を隔てて向き合って立っている彦星と織姫星の姿が目に浮かびます。
七夕に関する和歌②霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳の裾濡れぬ
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七夕に関する美しい和歌2つ目は、同じく山上憶良の七夕の歌です。「霞立つ天の川原に君待つとい行き帰るに裳(も)の裾(すそ)濡れぬ」現代語訳は、霞が立ちこめる天の川原であなたさまが来るのを待って、河原を行ったり来たりするうちに裳(腰から下にまとった衣)の裾が濡れてしまいました。」となります。
織姫星が彦星を今かと待ちかねている気持ちが詠われています。恋する女性の気持ちを織姫星に代わって詠んだ美しい和歌です。山上憶良の「七夕の歌十二首」の冒頭の歌としても有名です。
七夕に関する和歌③秋風に今か今かと紐解きてうら待ち居るに月かたぶきぬ
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七夕に関する美しい和歌3つ目は、奈良時代の歌人「大伴家持」の歌です。「秋風に今か今かと紐解きてうら待ち居(を)るに月かたぶきぬ」現代語訳は、「秋風に吹かれ、あなたさまが今にもいらっしゃることを紐を解いて心待ちにしていましたが、月が傾いてしまいました。」となります。
この歌は、大伴家持が七夕の夜に美しい天の川を眺めながら詠んだと言われています。彦星のことを心待ちにしている織姫星の女心が詠われていますね。
七夕に関する和歌④この夕降りくる雨は彦星の早漕ぐ舟の櫂の散りかも
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七夕に関する美しい和歌4つ目は、作者未詳の七夕の歌です。「この夕(ゆうへ)降りくる雨は彦星の早(はや)漕(こ)ぐ舟の櫂(かい)の散りかも」現代語訳は、「天から降ってくる雨は、彦星が天の川を楫(かじ)でこいでいる舟のしぶきなのか。」となります。
雨が降っている七夕は、天の川を見ることができません。七月七日に降る雨は、彦星が天の川を櫂(水をかいて舟を進める道具・オール)を使って渡る時のしぶきなのだろう、と想像で詠われています。作者未詳の歌ですが、雨を舟のしぶきに例えるところがロマンチックで美しい和歌ですね。
七夕に関する和歌⑤天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を
七夕に関する和歌5つ目は、「山上憶良」の七夕の歌です。「天の川いと川波は立たねどもさもらひかたし近きこの瀬を」現代語訳は、「天の川の波は、思ったよりは立っていないけれど(逢えるのかどうか)居ても立っても居られないことです。近い瀬なのに。」となります。
夏の大三角でも知られているわし座のα性「アルタイル」の彦星と、こと座のα性「ベガ」の織姫星。和歌では「近きこの瀬」と詠まれていますが、実際の距離は15光年(1光年は約9兆5千億キロメートル)離れています。想像しがたい距離がありますね。
9月には、ほぼ真上に空を縦断する天の川を見ることができます。美しい天の川を挟むように、彦星と織姫星の2つの星を見ることができます。
七夕に関する和歌⑥天の川霧立ちわたり彦星の楫の音聞こゆ夜の更けゆけば
七夕に関する和歌6つ目は、作者未詳の七夕の歌です。「天の川霧立ちわたり彦星の楫(かぢ)の音(ね)聞こゆ夜の更けゆけば」現代語訳は、「天の川に切りが立ち渡って夜が更けていくと彦星の漕ぐかじの音が聞こえます。」となります。七夕の夜に恋しい織姫星に逢いに行くために、彦星が急いで舟を漕ぐ姿が思い浮かびます。
七夕に関する和歌⑦天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し舟出すらしも
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七夕に関する和歌7つ目は、飛鳥時代から奈良時代前期にかけての貴族「藤原房前」の歌です。「天の川霧立ちわたる今日今日と我が待つ君し舟出すらしも」現代語訳は、「天の川に霧が立ち込めています。今日か今日かと私が待っていたあなたさまはもう舟出をされたことでしょう。」となります。
七夕に関する和歌⑧ま日長く恋ふる心ゆ秋風に妹が音聞こゆ紐解き行かな
七夕に関する和歌8つ目は、作者未詳の七夕の歌です。「ま日(け)長(なが)く恋(こ)ふる心(こころ)ゆ秋風に妹(いも)が音(ね)聞こゆ紐解き行(ゆ)かな」現代語訳は、「幾日もずっと長く恋しく思っている心に、秋風にのってあのこの気配が聞こえてくる。さあ、衣の紐を解いていきましょう。」となります。
急いで川を渡った彦星の、激しい息づかいが聞こえてくるようです。「秋風に妹が音聞こゆ」という響きが美しいですね。衣の紐を解く(衣を脱いで寝る)は、人間の欲望が露わに表現されています。
七夕に関する和歌⑨一年に七日の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも
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七夕に関する和歌9つ目は、作者未詳(柿本人麻呂歌集)の歌です。「一年(ひととせ)に七日(なぬか)の夜のみ逢ふ人の恋も過ぎねば夜は更けゆくも」現代語訳は、「一年に七夕の夜にだけ逢える人の恋の時間が過ぎないうちに夜が更けていきます。」となります。
この歌には左注(本文や和歌の後ろ(左)に付ける注記)があります。「一(いち)は云(い)わく 尽(つ)きねばさ夜(よ)そ、明けにける」現代語訳は「ひとつには(恋も)まだ尽きていないのに夜が明けていきました。」です。一晩中愛し合っても尽きることはないのに、夜が明けてしまったという歌です。
七夕に関する和歌⑩万代に照るべき月も雲隠り苦しきものぞ逢はむと思へど
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七夕に関する和歌10個目は、柿本人麻呂歌集の歌で、人麻呂本人の歌と言われている七夕の歌です。「万代(よろづよ)に照るべき月も雲隠(くもがく)り苦しきものぞ逢(あ)はむと思へど」現代語訳は、千万年(限りなく長い年月)も照るはずの月も雲に隠れてしまって苦しいものです。会いたいと思うのに。」となります。
下記の記事では、恋にまつわる和歌や切ない別れの有名な歌などをまとめています。平安時代の女性は基本的に男性の前に姿を現わさない文化でした。女性が他人に顔を見せることのなかった時代の切ない歌には、どのような歌があるのでしょうか。確認してみてくださいね。
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美しい短歌3選
有名な星の短歌①真砂なす数なき星の其中に吾に向ひて光る星あり
ここからは短歌をご紹介します。1つ目の有名な星の短歌は、「正岡子規」の歌です。「真砂(まさご)なす数なき星の其中(そのなか)に吾に向ひて光る星あり」これは、「夜空には砂のように数えきれないほどの無数の星が散りばめられている。その中に、わたしに向かって光っている星がある」と訳すことができます。
静まり返った夜に、砂のように無数に散りばれたられた美しい星空を見上げ、じっと眺めている正岡子規の姿が目に浮かぶ美しい短歌ですね。
切ない短歌②天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな
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美しい短歌2つ目は、星にちなんだ切ない「与謝野晶子」の短歌で「天の川そひねの床のとばりごしに星のわかれをすかし見るかな」です。これは、「夜の暗い部屋で添い寝をしていると、とばり越しに天の川が見える。彦星と織姫星の別れがとばり越しに見える。」と訳すことができます。
とばりとは、部屋の仕切りなどに垂れ下げて隔てとする布のことを言います。やっとの思いで出逢えた彦星と織姫星の別れが見えるというのは、切ない気持ちになりますね。
有名で美しい短歌③たなばたの星も女ぞ汝をおきて頼む男はなしと待つらん
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有名で美しい短歌3つ目は、「与謝野晶子」の七夕の歌です。「たなばたの星も女ぞ汝(な)をおきて頼む男はなしと待つらん」この歌は、「七夕の織姫星も女。あなた以外に信じて頼る男はいないと、私のように待ってるのでしょうか。」と訳すことができます。夫である与謝野鉄幹に当てて詠んだのかもしれませんね。
美しい和歌や短歌の世界を楽しもう!
今回は、七夕に関する和歌や美しい有名な短歌、切ない恋の歌、星にちなんだ短歌などをご紹介しました。美しい七夕の和歌や短歌はまだまだあります。ぜひ、お気に入りの歌を見つけてみてくださいね。旅する電車の中、風景を楽しみながら詠むのもおすすめですよ。
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