「しかねる」は正しい敬語?意味や例文・使い方・類語も紹介!【状況別】
更新:2019.06.21
「できかねます」「いたしかねます」など、「かねる」を使った表現をビジネスシーンではよく耳にしますよね。でも「しかねる」って敬語として正しいのでしょうか。どんな時にどんなふうに使うのでしょうか。今回は「しかねる」の意味・例文・使い方・類語をご紹介します!
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INDEX
「しかねる」の意味
「しかねる」の意味①:できない・不可能だ
「しかねる」は、動詞「する」の連用形に「かねる」をつけた形で、「できない」「不可能だ」という意味です。「わかりかねる」なら、「わかることができない」、すなわち「わからない」という意味になります。
POINT
動詞の連用形って?
動詞の連用形は、簡単に言うと、動詞を「〇〇ます」の形にした時に「〇〇」にあたる部分です。「決める」という動詞なら、「決めます」の「決め」の部分が連用形です。
「しかねる」の意味②:することが難しい
「しかねる」は、「することが難しい」、「することが困難である」という意味もあります。「理解しかねる」であれば、「理解することが難しい」という意味になります。「決めかねる」といえば、「してもいいのかどうか決められない」という迷ったり躊躇したりする気持ちを表します。
「しかねる」の意味③:することが耐えられない
「しかねる」には、「~することが耐えられない」という意味もあります。「見かねる」「耐えかねる」など、決まった動詞を使い、慣用表現的に使います。「迷子の子を見かねて、声をかけた」「寂しさに耐えかねて泣いてしまった」のように使います。
「しかねる」は否定することの婉曲表現
「しかねる」は、「できない」「することが難しい」「することが耐えられない」の3つの意味があると説明しましたが、いずれも否定の意味ですよね。日本語は、「~ない」とはっきり否定することを避ける文化です。ですので、「~かねる」を使って、婉曲的に否定するわけです。
POINT
婉曲とは?
婉曲(えんきょく)とは、断言を避けて遠まわしにやんわりと言うことです。日本語では、相手に配慮して、コミュニケーションを円滑にするために、婉曲表現を使うことが多いですよね。
「しかねる」は歴史的に古い言葉
「しかねる」は、万葉集の歌にも出てくるほど歴史のある言葉です。古語では「かぬ」と言っていました。「か」は可能であること、「ぬ」は否定の意味なので、「可能ではない」ということで、現代の意味と同じです。
学校で歴史の時間に、「白河の清きに魚の住みかねてもとの濁りの田沼恋しき」って歌、習いませんでしたか?江戸時代、松平定信の改革が厳しすぎて、もとの賄賂だらけだった田沼意次の時代を庶民が恋しがっている歌ですが、ここにも「住みかねて」という「動詞の連用形+かねる」が出てきますね。
「しかねる」は敬語として使える?
「しかねる」自体は敬語ではない
よく間違われがちですが、「しかねる」は敬語ではありません。「しかねる」は、「できない」「するのが難しい」「するのが耐えられない」という否定の意味を婉曲的に言う表現にすぎません。
「しかねる」はビジネスシーンでは敬語と合わせて使う
ビジネスシーンでは、他の敬語表現と「かねる」を組み合わせることで、敬語として使用しています。よく耳にする「いたしかねます」という表現がそのうちの一つです。取引先やお客様に対して「できません」という時に使いますよね。「いたす(致す)」は自分が相手に対してすることをへりくだって言う謙譲表現です。
「しかねる」の正しい使い方と例文:ビジネス(会話・電話編)
「しかねる」の使い方①:婉曲的に断る
スーパーのレジで
- お客さん:「すみません、一万円を両替してほしいんですけど。」
- あなた:「申し訳ありません。こちらでは両替はいたしかねます。」
「両替はできません」と婉曲的に言う表現です。最初に「申し訳ありません」などをつけることで、丁寧な言い方になります。その後に両替できる場所などを教えてあげると親切ですよね。
「しかねる」の使い方②:婉曲的に否定の気持ちを表す
イベントのスケジュールを決める会議で
- 議長:「今回のイベントですが、この予定表どおりでいいでしょうか。」
- あなた:「もう少し余裕があるほうがいいのではないでしょうか。みなさんのスケジュールを考えると、賛同いたしかねます。」
婉曲的に否定の気持ちを表すときに使います。ここでも、「賛同いたしかねます」だけを言うのではなく、相手や周りを配慮して、その理由や経緯を丁寧に伝えることも大切です。
「しかねる」の使い方③:電話で断る
電話でのお問い合わせに対応していない場合
- お客さん「すみません、〇〇について聞きたいんですが。」
- あなた:「申し訳ございません。お電話ではお答えいたしかねますので、ショップのほうに直接ご来店いただけないでしょうか。」
「電話では答えられない」ということを、丁寧に婉曲的に伝えています。「答える」の謙譲語「お答えいたす」に「かねる」がついた形です。この場合も、まず「申し訳ございません」と言うのがマナーです。
「しかねる」の正しい使い方と例文:ビジネス(メール・文書編)
「しかねる」の使い方①:上司へのメール
上司からある企画のまとめ役を頼まれたが断る時
- 「このような機会をいただいておきながら大変申し訳ないのですが、まだまだご指導をいただかなくてはならない立場ですので、まとめ役はお受けいたしかねます。」
「しかねる」を使うと、相手との距離が遠い印象があります。上記の例のように言うこともできますが、もっと近い距離の上司であれば、「お受けできそうもありません」など、別の表現を使うのもいいと思います。
「しかねる」の使い方②:取引先・お客様へのメール
こちらで対応できない依頼があったときの返信メール
- 「大変申し訳ございませんが、弊社ではご対応いたしかねます。お手数ですが、下記のカスタマー・センターまでお問い合わせくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
「ご対応いたしかねます」は「対応できません」の意味です。「大変申し訳ございませんが」などと組み合わせて、丁寧に恐縮感を出すのがマナーです。どこで対応できるのかなどの情報も合わせて書くようにします。
「しかねる」の使い方③:文書
ショッピングモールの化粧室の貼紙
- 「ここにお荷物を置かないでください。紛失した場合、当店では責任を負いかねますのでご了承ください。」
自分が客の立場である時に、お店の貼紙や何かの注意書きなど、よく「しかねる」を見かけますよね。貼紙一枚にしても、作成するほうは、言葉を選びながら気を遣って作成しているんですね。
「しかねる」の正しい使い方と例文(プライベート編)
「しかねる」の使い方①:文章などに使う時
理解できない!
- 「近頃の男ってどうなってるんだろうか。彼女作ったりするのが面倒くさいとか、デートするよりゲームのほうが楽しいとか、まったく理解しかねる。」
プライベートで自由に書く文章なので、敬語と合わせる必要はありません。本来、文語的な表現ですが、話す時に、「まったく、理解しかねるわ!」のように使うこともできます。
「しかねる」の使い方②:~することが耐えられない
「見かねて」「耐えかねて」の使用例
- 同僚:「課長ってひどくないですか?昨日も田中さんをずっと怒鳴りつけていたんで、見かねて止めに入ったんですよ。」
- あなた:「へえ、そうなんですか。私も以前、課長のやり方に耐えかねて、主任に相談したことがあるんですよ。」
「見かねて」「耐えかねて」は、それぞれ「見ていられなくて」「耐えることができなくて」の意味で、慣用句的に使われています。使用例はオフィスでのおしゃべりですが、特に敬語と合わせて使う言葉ではなく、ビジネスシーンに使う言葉でもありません。
「しかねる」を使うときの注意点
「しかねる」を使う時の注意点①:ビジネスシーンでは敬語と合わせて
「しかねる」自体は敬語ではないので、ビジネスシーンで使う場合は、敬語と組み合わせて使う必要があります。間違えやすいのが、「できません」の意味で、「できかねます」と言ってしまうことです。謙譲表現を使って、「いたしかねます」と言いましょう。
「できかねる」はよく耳にする表現ですが、「かねる」には「できない」という意味が最初からあるので、「できかねる」だと「できる+できない」になるので、文法的におかしいのではないかという声もあります。確かに文法的におかしい表現ですが、慣習的に使われています。
「しかねる」を使う時の注意点②:どの意味で使うのか相手にわかるように
「しかねる」には三つの意味があると説明しました。「できない」「するのが難しい」「するのが耐えられない」です。取引先やお客様に対して、「それはいたしかねます」と言っても、相手にはどの意味で言っているのかはっきり分からない場合もあります。
いくら否定な内容を婉曲的に言うとしても、はっきりした意味が伝わらないのではビジネスシーンでの使用にふさわしくありません。他の言葉や文を補って、文脈ではっきり伝わるようにすることが大切です。もしくは、「しかねる」自体を使わず、もっとはっきりした意味の表現を使うのがいいでしょう。
「しかねる」を使う時の注意点③:人によっては不快に感じる
ビジネスシーンでよく使われる「しかねる」ですが、人によっては不快に感じる人も多いようですね。理由の一つとして、敬語と一緒に使うのが原則ですが、それをせず「できかねます」「答えかねます」のように間違って使われがちだから、というのが挙げられます。
もう一つの理由は、つっけんどんな冷たい感じを受けるからというものです。実は筆者もそれを感じる一人です。注意書きなどに書かれている場合など、万人に向けたものは特に何も感じませんが、直接個人的に言われたりすると、突き放されたように感じます。
「しかねる」を使う時は、その言葉だけをサラリと言うのではなく、前後に丁寧な文章をつけることが大切になります。「私では分かりません」と言いたい時、「私では分かりかねます」だけでなく、「あいにく、私では分かりかねます。大変申し訳ございません」など、声のトーンにも気をつけながら丁寧に伝えることが大切です。
「しかねる」の類語
「しかねる」の類語①:かねる
単独の「かねる」という言葉もありますよね。こちらは通常、漢字で「兼ねる」と書き、意味は全く違います。「兼ねる」は、一つのものが二つ以上の働きをする時に使いますよね。例えば「趣味と実益を兼ねてこの仕事をしている」とか、「彼は理事と会長を兼ねている」というふうに使います。
「しかねる」の類語②:しかねない
「しかねない」は、「動詞の連用形+かねない」の形で、「~する可能性がある」「~する恐れがある」という意味です。「彼なら泥棒もやりかねない」のようにマイナスの意味合いで使うことが多いですね。「しかねる」の反対の意味で使う、ということはありません。
「しかねる」を正しく使っていろんなシーンに役立てよう!
いかがでしたか?「しかねる」は間違った形で使われやすい言葉です。敬語と組み合わせて使うようにしましょう。正しく使って、いろんなシーンに活かしてくださいね!
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