こぎん刺しの布選びと刺し方とは?北欧図案との違いってあるの?
更新:2019.06.21
青森の伝統的なこぎん刺しをご自分でも刺してみませんか?布の選び方や刺し方、簡単な図案をご紹介いたします。知っているようで知らない北欧の図案との違いについても簡単にご紹介しています。北欧雑貨とも相性のいいこぎん刺しの世界をどうぞお楽しみください。
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INDEX
じわじわ人気のこぎん刺し!刺し方は知ってる?
こぎん刺しとは?
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こぎん刺しとは、日本に伝わる刺し子の一つで、青森県津軽に伝わる伝統的な刺繡のことを言います。青森では筒袖で着丈の短い野良着のことを「小布」(こぎん)と呼び、衣服のほころびを麻糸で繕うことから始まったとのことです。
青森には、弘前市を中心とした津軽地方のこぎん刺し、青森南部の菱刺しがあり、この二つは日本三大刺し子にも選ばれています。奇数目の経糸を数えて刺していく独特の刺し方になっています。
津軽地方だけでも、西こぎん、東こぎん、三縞こぎんの3種類があると言われています。それぞれの地域で刺した模様が異なるので、それぞれの呼び名が付いたそうです。
こぎん刺しを刺したわけは?
江戸時代の庶民の暮らしは、今と違い徳川幕府によって厳しく取り締まりが行われていました。幕府の財政難から倹約令(1724年)などが出され、津軽地方の農民は木綿の使用を禁じられていた時代があります。
寒冷地のため木綿栽培が難しかった津軽では、麻を育てて糸を紡ぎ、織物にして染め、着物に仕立てていました。1764年頃になると木綿の糸が手に入るようになり、補強と保温を兼ねたこぎん刺しを施したそうです。
津軽の女の子は、5、6歳でこぎん刺しをはじめ、14、15歳ほどで一人前になったそうです。新しく刺した着物は、若い男女の晴れ着に、少し着古すと日常の着物にし、更に使い込んでから野良着に、と大切に使ったそうです。
こぎん刺しの布と糸選びについて
こぎん刺しに向いている布は?
こぎん刺しは、布目を数えながら刺していくので、平織の布を選ぶといいようです。伝統的なこぎん刺しは麻布を使用していましたが、手に入らない場合は「コングレス」という刺しゅう用の布でも刺すことができます。
コングレスは、クロスステッチやノルウェーのハーダンガー刺しゅうなどに使う布地のことです。コングレスのほかにも、「ツヴァイガルト」や「エタミン」なども使用することができますよ。
こぎん刺しに使用する麻布は、1cm四方の中に経糸が7~8本、コングレスも経糸が7本程になります。布目の大きさで仕上がりが変わるので、作品を作る前に試しに刺してみてくださいね。
針と糸は何を選べばいいの?
糸は、こぎん刺しに使う「こぎん糸」がオリンパスや、先ほどのつきやからも出ています。こぎん糸は、つやを消してあるので素朴な雰囲気を出すことができます。
25番の刺しゅう糸を使って刺す場合はコングレスなら6本どり、目の細かい布地は3~4本どりで試してみてくださいね。針は、こぎん針のほか、先が丸くなっているとじ針や、クロスステッチ針でも代用ができます。
つきやの商品については、弘前市の手芸店「つきや」のオリジナル商品なので、お店に電話注文すると取り寄せることができます。本格的に始めたい方は、つきやさんの糸と布の色見本を揃えておくといいですね。
こぎん刺し特有の刺し方と図案
こぎん刺し図案はどう見るの?
図案は、縦の罫線が経糸を表します。手書きの場合は升目を塗りつぶすのではなく、糸を表す線を縦の罫線にまたいで書くのが特徴です。何も色がついていない升目は、糸が布の裏側にわたっている状態です。
例えば図案に4マス塗ってある場合は、3本の経糸に糸が渡る状態を表しています。クロスステッチの場合は、升目に刺しゅうを施しますが、こぎん刺しの場合は、罫線に糸を渡していくことになります。
こぎん刺しの単独模様の場合、上下左右対称となっているものが多く、連続模様も上下や左右で対称になっているデザインが多いので、図案と布の中心をきちんと決めて刺していくと模様が布の中心からずれません。
こぎん刺し特有の刺し方とは?
こぎん刺しの刺し方もクロスステッチとは違い、必ず右から左へ針を進めていくのが特徴です。例えば、「花こ」の刺し方は、中心に1目刺し、経糸1目分を裏側に通し、次に3目分経糸を数えて糸を表に渡していきます。
次の段は、経糸3目分の糸を表に渡し、経糸1目分裏側に通します。図案によっては2目分や4目分という刺し方の場合もありますが、基本の刺し方は、1、3、5という風に奇数目分経糸を数えながら刺していきます。
こぎん刺しの刺し方は、一つ一つの模様を刺していくのではなく、1段1段糸を渡していき模様が完成します。どちらかというと編み物や織物に近いのではないでしょうか。
伝統的な図案のもどこ
代表的な基本の模様にテコナコ(ちょうちょ)、花コ(花)、豆コ(豆)、ウロコ(鱗)、猫のマナコ(猫の眼)などがあります。名前のついていないものも合わせると、模様の数だけでも300種類以上あると言われています。
津軽では、伝統的な模様のことを「もどこ」と呼び、自然や生活にちなんだ身近なものがモチーフになっています。津軽弁では、可愛いものに「コ」を付けるので、花コ、豆コという名前になっているようです。
最近では、自分で図案をアレンジして作品を作っている方もいらっしゃるようですよ。後ほどパソコンでの図案の作り方もご紹介いたしますので、興味のある方はチャレンジしてみてくださいね。
こぎん刺しの刺し方は簡単で楽しい!
こぎん刺しの刺し方をご紹介!
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材料が揃ったら、実際にこぎん刺しを刺してみましょう!布はほつれやすいので少し大きめに裁断し、ほつれ止めの液状のりを塗布するか仕付け糸でかがります。
最初に、布を四つ折りにして刺しはじめとなる中心を決め、消えるチャコペンなどで印をつけます。針運びは右から左が基本になり、1段刺すごとに布を180度回転させて上下を逆さまにします。
基本模様の刺し方手順
- ①布の中心に糸を通し、布を裏返して左右の糸の長さを同じにする。(基本模様の場合のみ)
- ②布を表に返して左側の糸で1段目の左部分を刺し、布を180度回転させて2段目を右から左へ刺していく。
- ③3段目を刺すときは、同じように布を180度回転させて右から左へ刺していく。
- ④上半分を刺し終わったら、先ほどの残しておいた右側の糸で下半分を右から左へ刺していく。
刺し方で気を付けることは?
基本の模様と連続模様の刺し方について
刺し方の手順にも簡単に記載しましたが、基本の模様を単独で刺す場合は中心に一度糸を通した後、布を裏返して左右の糸を同じ長さに調節します。先に上半分の模様を左側の糸で刺し、右半分を右の糸で刺します。
連続模様の刺し方は、1段落目の右半分をさせる程度の糸を残して、中心から左側を刺し進めていきます。残す右側の糸の長さは、右半分の1段落目の布幅を2倍にした長さになります。
連続模様を刺すときは、糸の長さをおおよそ90cmに切っておくと刺しやすくなりますよ。糸を買ってきたときに一度ほどいて厚紙に巻きなおしておくと使いやすいそうです。その際メーカーと色番のメモを忘れずに!
糸こきとゆるみについて
ゆるみとは、1段刺すごとに布を裏返して糸の折り返し部分を緩くたるませることを言います。糸こきとは、布の両端を上下に軽く引っ張って糸と布を馴染ませることを言います。
糸をきつめに刺し続けてしまうと、布が引っ張られてしまい大幅に縮んでしまいます。そのため、1段ごとに2箇所のゆるみを作り、両端の布を引っ張って糸こきをしていくことで布の縮みを大幅に減らすことができます。
少し手間はかかりますが、ゆるみと糸こきを1段刺すごとにしていけば、布の縮みも少なく、刺し目もきれいに仕上げることができますよ。
刺しはじめの玉結びや糸始末はどうするの?
刺しはじめの玉結びや刺し終わりの玉止めは必要なく、一般的な刺繍と同じように糸を少し長めにとっておき糸始末をします。新しい糸を付ける場合は、1段下の表に響かないところを1目おきにすくって刺していきます。
糸始末は、布を裏返して近くの縫い目に二目ほど渡した後、表部分に糸が渡っている経糸を選んで1目おきに2~3目程渡し、糸端を3mmほど残して切ってください。
また、刺している途中で糸のよりがきつくなったり緩くなったりしたときは、その都度元の状態に戻すようにするときれいに仕上げることができますよ。
こぎん刺しと北欧の刺し方の違いは?
こぎん刺しの刺し方は1パターンだけ
こぎん刺しは幾何学模様の連続なので、ノルディック柄とよく似ていますね。ノルディックとは、「北欧の」「北欧風の」という意味があり、雪の結晶やトナカイ、もみの木や幾何学模様が伝統的な柄とされています。
こぎん刺しのもどこにも北欧風の模様を見つけることはできますが、両者の違いは刺し方にあります。クロスステッチは、例えば雪の結晶を刺してから次の模様を刺していく自由な針運びですが、こぎん刺しは一方通行の針運びです。
右から左へと刺すだけの刺し方しかありませんが、図案は驚くほどバラエティに富んでいます。単純な刺し方なのにデザインが豊富なところもこぎん刺しの魅力と言えそうですね。
それぞれの国にある伝統的なステッチ
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また、それぞれの国によって伝統的なステッチがあり、クロスステッチ以外にも、デンマークのフレメ刺しゅう、フィンランドのカスパイッカ、ノルウェーのハーダンガー刺しゅう、スウェーデンのツヴィスト刺しゅうなどがあります。
これ以外にもたくさんのステッチがあり、地域によって図案や刺し方が違っています。津軽も雪国ですが、北欧も寒い地方なので寒い冬の間昔の女性たちは、針仕事をしていく中で様々な刺しゅうを考え出していたのかもしれませんね。
北欧風の刺し方にアレンジするには?
色の組み合わせを北欧風に!
こぎん刺しは、元々藍色の布に白糸が伝統的な色合いでした。白やベージュなどをベースにしてアクセントカラーを組み合わせるか、パステルカラーにグレーの配色の組み合わせにすると、北欧雑貨などと相性が良いようです。
本来のこぎん刺しには雪の結晶やもみの木などの模様はなく、現代版のこぎん刺しにだけ使用されています。こぎん刺し作家さんの中には、伝統的なもどこにアレンジ図案を加えてよいのかと迷った方もいらっしゃったようです。
今では、もどこに北欧ステッチを組み合わせた図案や、作家さんのオリジナル図案など新しいこぎん刺しを色々と楽しむことができますが、日本の三大刺し子でもあるので、基本はしっかり押さえておきたいところですね。
自分でもこぎん刺しの図案を作ろう!
方眼紙かパソコンがあればOK!
方眼紙や方眼ノートをお持ちの方は、縦の罫線を経糸として考え升目に線を引くと図案ができます。家にパソコンがある場合は、エクセルファイルでも簡単に図案を作ることができますよ。
エクセルファイルの右上辺りにある書式設定で、行の高さを11.0、列の幅を1.0に変更します。行番号や列番号にカーソルを合わせ、右クリックしても書式設定を変更することができますよ。マス目が大体正方形になればOKです。
後は、色を付けたい升目にカーソルを合わせ、ペンキのアイコンをクリックしてください。パソコンで作った図案は、升目が織り糸を表します。正式な図案とはそこが違いますので、気を付けてくださいね。
こぎん刺しの輪を広げよう!
江戸時代の頃は、飢饉が度々津軽地方を襲い、多くの人が亡くなったそうです。この頃は木綿の糸を手に入れることも難しく、今のようにこぎん刺しが急速に発展したのは明治に入ってからだと言われています。
木綿の衣服が簡単に手に入るようになると、こぎん刺しはすたれてしまったそうですが、現在では、こぎん刺しに魅せられた手仕事作家さんたちが様々な取り組みを行っています。
日本を代表する刺し子でもあるので、新しい模様や図案を取り入れながらも、こぎん刺しの生まれた歴史や伝統的な模様を大切にしていきたいですね。まずはチクチク楽しんで、少しづつこぎん刺しの輪が広がるといいですね。
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