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人事を尽くして天命を待つのことわざの意味は?由来や漢文の原文・例文も

更新:2019.06.21

「人事を尽くして天命を待つ」この言葉を受験や試合の後などに耳にしたことがある人も多いと思います。昔から私たちに馴染みのある言葉ですが実は出典や由来はあまり知られていません。このことわざの例文・似た意味の四字熟語はどんなものがあるのでしょう?今回は「人事を尽くして天命を待つ」についてまとめてみました。

人事を尽くして天命を待つのことわざの意味は?

人事を尽くして天命を待つのことわざの意味①人の力の限りを尽くす

力の限りを尽くす

人事を尽くして天命を待つの「人事」が表すのは、人の力でできる事柄のことです。「人が自分でできる範囲のこと」「人がやるべきこと」を限界まで出し切って、結果は天に任せるという意味です。

例えば、こんな童話があります。ある百姓が、死ぬ間際に、「ぶどう畑のどこかに宝を隠した」と息子に告げて亡くなります。宝を探そうと、息子は来る日も来る日もぶどう畑を掘り返し続けました。耕されて土壌が豊かになった畑には、立派なぶどうが実ったという話です。ぶどうを目にした息子は「宝」の正体を知るのです。

耕すことは人の力でできることですが、立派なぶどうが実るかは、天候にも左右されますね。しかし、来る日も来る日も耕していなければ、どんなに天候が良くても、立派なぶどうが実ることはあり得ませんでした。

人事を尽くして天命を待つのことわざの意味②焦らずに待つ

焦らずに待つ

人事を尽くして天命を待つの「天命を待つ」ことは、焦らずに待つことを意味します。やるべきことをやった後はジタバタせずに、天の意志にまかせてゆったり過ごせば良いという意味です。

ぶどう畑を受け継いだ息子は、「宝」の正体を知らなかったので、ぶどうの実りは眼中になかったでしょうね。あえて「宝」の正体を教えなかった百姓は、物事や結果の待ち構え方まで教えたかったのかもしれません。

人事を尽くして天命を待つのことわざの意味③運を丸投げすることではない

未来は自分で掴み取る

人事を尽くして天命を待つことは、運を天に丸投げすることではありません。似ているようですが、前者は「人の努力」こそが大事なのだと説いています。後者は、何もせず成り行き任せというニュアンスがありますね。

すべてが終わったあとに、結果について後悔しないのはどちらなのでしょうか。成り行き任せだと、成功したとしても喜びが薄く、失敗すれば後悔だけが残る可能性が高いです。

人事を尽くして天命を待った人は、成功すれば、誰よりも深い喜びを噛みしめることができますし、悪い結果であっても後悔をすることは少ないと考えられます。失敗したとしても、胸を張って新たな挑戦ができるのです

人事を尽くして天命を待つのことわざは誰の言葉?由来や原文の漢文も

人事を尽くして天命を待つは誰の言葉:中国の胡寅(こいん)

由来は中国の儒学者

人事を尽くして天命を待つは、故事成語です。故事成語とは、昔の中国で起こった出来事をもとに生まれた教訓のことです。そのため、必ず「言った人」が存在する言葉ですね。では、誰の言葉かというと、南宋王朝(1127-1279年)が栄えていた時代に、高名な儒学者として称えられた「胡寅」の言葉です。

儒学者は、孔子を始祖とする信仰または学問である「儒教」を研究したり、教えを説いたりする人のことです。儒教は、4~5世紀に日本に伝わって以来、文化的に大きな影響を与え続けました。日本に胡寅の言葉が伝わったのも、儒教を介してだと考えられます。

人事を尽くして天命を待つの由来:読史管見(どくしかんけん)

私見を記す

人事を尽くして天命を待つは、胡寅の言葉ですが、その由来は武将と戦にあります。胡寅の著作のなかに、「読史管見」という全30巻にも及ぶ大作があります。「読史管見」は、「歴史書を読んでの私見」を意味します。歴史書を読んで、胡寅が思考したことをまとめた本なのです。

胡寅は「読史管見」で、太元8年(383年)に起こった「淝水(ひすい)の戦い」について触れたとき、人事を尽くして天命を待つという言葉を使いました。

東晋(とうしん)という国の優れた家臣であった「謝安(しゃあん)」が、攻め込んできた相手国の軍を、みごとに撃退したときの心境を「人事を尽くして天命に聴す」と表現したのが由来です。謝安さんは、国を守るために準備や采配などを、ものすごく頑張ったのでしょうね。

人事を尽くして天命を待つの由来の漢文:盡人事而待天命

人事天命の漢文

人事を尽くして天命を待つの漢文は、「盡人事而待天命」あるいは「盡人事待天命」となります。漢文のテストに出題される確立が高そうな言葉ですね、訓点の打ち方に注意しましょう。

ことわざ・慣用句辞典を読んでも、人事を尽くして天命を待つは、重要語として記されています。ちなみに、四字熟語でも「人事天命」という言葉で知られています。「はい、ここテストに出るよ~」という幻聴が聞こえてきそうです。

この他にも、人の努力にまつわることわざは、たくさんあります。こちらの記事で、数種類のことわざを分かりやすくまとめているので、由来もチェックしてみてください。新しい言葉との出会いがあるかもしれません。

人事を尽くして天命を待つの使い方例文5選

人事を尽くして天命を待つの例文①威厳を出す

威厳を感じさせる女性

人事を尽くして天命を待つの例文の1つ目は、威厳を出すための使い方です。例えば、大会での試合やプレゼンなどを控えて、「先輩、あしたは頑張ってくださいね!」のような言葉をかけられたときに使いましょう。

「そうね、人事を尽くして天命を待つの心境ね」のような返し方ができれば、どんな出来事を前にしても落ち着きを失わない、大人の女性の威厳が出せます。さすが先輩!と尊敬の目で見られるかもしれません。

人事を尽くして天命を待つの例文②自分に言い聞かせる

自分に言い聞かせる

人事を尽くして天命を待つの例文の2つ目は、焦る自分に言い聞かせるときの使い方です。受験や資格試験を終えて、結果を待つまでの間は、ジリジリとして落ち着かないことが多いですよね。

焦らずに、「やれるだけの勉強はした!人事を尽くして天命を待つ状態なんだ!」と自分に言い聞かせてみましょう。今までの努力が思い起こされて、不思議と心が落ち着いてきます。自信を出して、慌てず、焦らず結果が出るのを待ちましょう。

人事を尽くして天命を待つの例文③相手をさとす

さとしてアドバイス

人事を尽くして天命を待つの例文の3つ目は、相手をさとすときの使い方です。大事なことが控えているのに、何の準備もしないで、時が過ぎるままに任せている相手に使いましょう。結果待ちで焦っている相手でもOKです。

落ち着いて準備を始めたり、結果を待ったりできるよう「人事を尽くして天命を待つという姿勢が大事だよ」とさとしてみましょう。言わんとすることが伝わっていなければ、今回ご紹介した意味を教えてあげてくださいね。

人事を尽くして天命を待つの例文④誰かを気遣う

相手を気遣う

人事を尽くして天命を待つの例文の4つ目は、頑張っている相手を気遣うときの使い方です。努力を続けることや、準備を怠らないことは素晴らしいことですが、ときに頑張り過ぎることもあるかもしれません。

相手の頑張りを認めつつ、もう少し肩の力を抜いてほしいと伝えるために「人事を尽くして天命を待つのも大事だけど、体調にも気をつけてね」と使ってみましょう。頑張る人が、ほっとして一息つけるように気遣いたいですね。

人事を尽くして天命を待つの例文⑤決意を表明する

決意を表明する

人事を尽くして天命を待つの例文の5つ目は、決意を表明するときの使い方です。あえて言葉にすることで、力の限りを振り絞って事に臨むことを示しましょう。一度口にしたことですから、いつも以上に、やる気を出すための言葉になります。

気合を入れて「人事を尽くして天命を待つ気持ちで挑戦するぞ!」と口に出して言ってみてくださいね。その言葉を聞いてくれる人がいると、より効果的です。強い決意を翻さないよう、もてる力を出しつくしてくださいね。

誰かを諭したり気遣ったり、決意を表明したり、言葉の使い方はさまざまですね。中でも大切にしたいのは、誰かを気遣ったり励ましたりする「ねぎらい」の言葉ではないでしょうか。こちらの記事では、場面別にねぎらいの言葉の例文が、たくさんまとめられています。誰かのための一言を、こちらで探してみませんか。

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざ3選

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざ①天は自ら助くる者を助く

天の助けを得る

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざの1つ目は、「天は自ら助くる者を助く」です。イギリスの著述家・サミュエル・スマイルズ(Samuel Smiles)が、1858年に発行した著書『自助論』で使用しました。

英語の「Heaven helps those who help themselves」が日本語に訳され、定着したものですね。聖書に出てきそうな言葉ですが、違いました。しかし、由来を辿っていくと、さらに古代ローマまで遡ります。

ラテン語のことわざで「fortes fortuna adjuvat」、「運命はより大胆不敵な者・勇敢な者に微笑む」というような意味になります。古代ローマらしく、戦争を匂わせることわざですね。ラテン語に影響を受けた国では、今でも残っていることわざです。

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざ②能事畢われり

準備終了

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざの2つ目は、「能事畢われり(のうじおわれり)」です。「畢れり」は「終われり」とも表記されます。「能事」は成すべきことを意味します。やるべきことはすべてやり終わった!やれるだけのことはやったので、これ以上すべきことは何もないということわざです。

ただし、結果を待つことに関係する表現はないので、人事を尽くして天命を待つの前半部分の類語と考えられますね。やれるだけのことを終えた後の、どっしりとした雰囲気が感じられます。

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざ③果報は寝て待て

果報は寝て待て

人事を尽くして天命を待つの意味と近いことわざの3つ目は、「果報は寝て待て」です。果報という言葉の由来は、仏教の用語にあります。2つの意味があって、「果報=因果応報」とする意味と、「果報=幸せ」という意味です。

果報は寝て待てということわざは、焦らずに待っていれば、幸せはやってくることを表します。しかし、因果応報の意味も考えると、寝て待つ前に、どのような行いをしたかによって結果が変わりそうです。良い行いをしていれば良い結果を、悪い行いをしていれば悪い結果を招くのでしょう。

人事を尽くして天命を待つの意味と、通じるものがありますね。寝て待つ前に、どれだけ準備や努力をしたかによって、結果の受け止め方が変わりそうです。寝ているだけでは、幸せはやってきませんよね。

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語5選

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語①運否天賦

運命は決められている

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語の1つ目は、運否天賦(うんぷてんぷ)です。「運否」は人の運・不運を意味します。「天賦」は天が与えるものという意味です。人の運・不運は、天の意志によって決められているということを表す四字熟語となっています。

違っている点は、努力が入る余地がない、人の力ではどうすることもできない事柄を指していることです。成り行き任せのようなニュアンスを感じます。例文として、「商売敵から招待状をもらった、鬼が出るか蛇が出るか、運否天賦で行ってみよう」などが考えられます。

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語②臥薪嘗胆

悔しさを忘れない

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語の2つ目は、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)です。「臥薪」は「薪の上で寝起きすること」、嘗胆は「肝をなめること」を意味します。

かつて敵討ちを願った者が、薪の上で寝起きを続けることで、体に痛みを感じさせ決意を鈍らせないようにしました。また、ある者は苦い肝を舐めることで、悔しさを忘れないようにしたという故事を由来としたものです。

良い結果を得るためには、どんなに時間がかかろうとも、苦労を重ねることを厭わないことを意味する四字熟語です。人が努力を尽くすという点にフォーカスを当てていますね。例文では「今は臥薪嘗胆の時期、目的を達成させるために頑張ろう」などが考えられます。

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語③乾坤一擲

一か八かの勝負

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語の3つ目は、乾坤一擲(けんこんいってき)です。唐の詩人・韓愈(かんゆ)が、項羽と劉邦という武将の戦いを詩にしたものが由来です。停戦状態になったときに、劉邦が部下の進言を受けて項羽を急襲し、みごと勝利しました。

「乾坤」は天地、「一擲」はサイコロを振ることを意味し、一か八かの大勝負を表します。結果を待つという点では同じですが、じっくり準備するというよりも、短期決戦的な意味合いが強い表現です。例文として「引き分けのまま終了かと思ったが、乾坤一擲のシュートが決まって試合に勝つことができた」などがあります。

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語④泰然自若

ゆったり落ち着く

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語の4つ目は、泰然自若(たいぜんじじゃく)です。「泰然」は、ゆったりとして落ち着いていること、「自若」は物事に慌てずに落ち着いていることです。似た意味の言葉を組み合わせることで、落ち着きを強調している四字熟語です。

焦らずに結果を待つという点で、意味が近い表現と言えますね。しかし、準備や努力よりも、落ち着いた態度こそを大切にしている点が異なります。人事を尽くして天命を待つときの態度は、こうありたいものです。例文では、「リーダーの泰然自若な沈着さに助けられて、あのピンチを乗り越えました」などがあります。

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語⑤粉骨砕身

身を砕いて頑張る

人事を尽くして天命を待つの意味と近い四字熟語の5つ目は、粉骨砕身(ふんこつさいしん)です。『禅林類纂(ぜんりんるいさん)』という仏教の書物に由来し、仏の恩に報いるために骨を粉にし、身を砕くほど、全力を尽くして努力することを意味する四文字熟語です。

人の力を尽くすという点では、意味が近い四文字熟語ですが、「仏の恩に報いる=誰かのために働く」というニュアンスを含んでいます。自分自信の結果のためといよりも、人のための結果という点が異なりますね。例文として「初心に戻って、粉骨砕身の思いで取り組みます!」などがあります。

粉骨砕身で取り組むことも大切ですが、ずっと頑張ったままでは、疲れてしまいます。リフレッシュするために、少しのんびり過ごしてみるのはいかがでしょうか。頑張り屋さんで、のんびりした過ごし方が分からない!という方は、こちらの記事を読んで、のんびりする方法を学んでみませんか?

人事を尽くして天命を待つ方法は

中国の儒学者に由来する「人事を尽くして天命を待つ」は、人としての生き方を教えてくれますね。何の努力もせずに良い結果を得ようとしても難しいものがあります。しかし、気を張りつめすぎるのも考えものですね。

以前、海外の方に、日本の人は頑張りすぎると言われたことがありました。努力を続けながらも、ときには立ち止まってホッと一息つくことも大切なんですね。少しだけ羽を休めて、明日も頑張る力を蓄えましょう。

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